セックス中のカップル

クラミジアは、感染症法で性感染症定点からの報告が義務付けられている5類感染症で、日本で最も多い性感染症と言われています。
感染しても自覚症状に乏しいため、妊婦健診で初めて発見されるケースも少なくありません。
こういった事実から、無自覚のうちにパートナーへ感染させている可能性も否定できません。
最近では性のモラル低下や性の多様化が進み、クラミジア感染症の患者数は増加しています。

クラミジアは感染者との粘膜の接触や、精液、および腟分泌液を介して感染します。
感染すると精巣上体炎や子宮頸管炎などを引き起こす場合があり、これは不妊症や子宮外妊娠の原因となります。
咽頭クラミジアでは、咽頭の腫れや痛みを伴うことがあります。

では、クラミジア感染症になってしまった時の内服薬や、オーラルセックスの危険性、さらに若者に感染者が多い理由について以下で説明していきます。

咽頭クラミジアと性器クラミジアの薬は同じ?

クラミジアは感染した部位によって、咽頭クラミジアと性器クラミジアという呼ばれ方をします。
しかし、両者とも原因はクラミジア・トラコマチスという病原菌で共通しているため、基本的に病巣が性器か咽頭かに関わらず同じ薬を使って治します。

性器および咽頭クラミジア感染に用いられる薬は、テトラサイクリン系薬、マクロライド系薬、ならびにニューキノロン系薬といった抗菌薬です。
これらの抗菌薬を使い、性器や咽頭に感染したクラミジア・トラコマチス菌を除菌します。
パートナーとお互いにうつしあってしまう、いわゆるピンポン感染を防ぐ目的で、パートナーも同時に受診し、必要であれば内服することが重要です。

マクロライド系薬について

数ある抗菌薬の中でもマクロライド系薬は、一般的に処方される頻度が高いものです。
しかしながら抗生物質は処方箋を必要とする薬であるため、性器クラミジアであれば泌尿器科や婦人科、咽頭クラミジアでは耳鼻科を受診する必要があります。
また、性器か咽頭かに関わらず性病科で診察を受けることも可能です。

では、処方される頻度の高いマクロライド系薬は、どのような薬であるのか説明します。
マクロライド系薬は、ペニシリンアレルギーのかたにも使うことができ、抗菌薬の中でも消化器に出る副作用が比較的マイルドだという特徴があります。
そして、作用時間が長く、1回内服すると効果が1週間程度持続するものも存在します。

マクロライド系薬は、抗けいれん薬や抗凝固薬、ならびに免疫抑制剤といった薬と飲み合わせが悪いことが知られています。
こういった薬を服用しているかたは、事前に医師に相談しましょう。
さらに、長期間連用することで薬剤耐性菌という抗菌薬の効かない菌が出現することも問題となっており、医師の指示通りに服用することが大切だとされています。

作用秩序

マクロライド系薬の作用機序についても詳しく見ていきましょう。
あらゆる生物の細胞内に存在する構造としてリボソームがあります。
このリボソームはタンパク質合成を担っています。
ヒトと細菌のリボソームの違いは、大きさにあります。
そこで、マクロライド系薬は細菌のリボソームに対し、特異的に作用することで、細菌だけに効果を発揮することができるようになっています。

上述したように、マクロライド系薬の副作用は比較的マイルドだとされていますが、誰に対しても不快な症状が全く出ないというわけではありません。
そこで、副作用についてもお伝えします。

副作用

副作用は主に2種類に分けられます。

消化器症状
マクロライド系薬は他の抗菌薬と違い、腸内細菌を減少させません。
しかし、体内で代謝されると消化管活動が活発になり、蠕動運動が過剰となって下痢を引き起こすことがあります。
この下痢の場合、市販の整腸剤では効果がなく、消化管の活動を抑える薬が有効です。
また、過剰な消化管活動により、腹痛や吐き気が起きる場合もあります。
循環器症状
心電図上、QT延長症候群や心室頻拍などがあらわれる場合があります。
QT延長症候群は、心室頻拍の誘因とされています。
心室頻拍はもともと心臓の病気のないかたにも発生するものですが、血圧低下などを引き起こすことがあるため注意が必要です。
これらの循環器症状は、もともと心臓の悪いかたに起きやすいため、持病をお持ちのかたは事前に医師に伝えておきましょう。

内服する際の期間や注意事項

以上では、主にマクロライド系薬について説明してきました。
では、実際に性器クラミジアや咽頭クラミジアにかかって内服する際の期間や注意事項などを確認しましょう。

性器か咽頭かに関わらず、症状があって飲み薬が処方された場合、2~3日で症状がおさまることがほとんどです。
そのため、処方された抗菌薬を飲み残してしまうことがあります。
しかし、先ほどお話した通り、薬剤耐性菌が出現してしまうとクラミジアが再度増殖し、ふたたび性器や咽頭で症状が出ることがあります。

この薬剤耐性菌が出現した場合、同じ種類であるマクロライド系薬の使用はできなくなります。
そのため、完治したと医師から言われるまでは、指示通りに内服を続けましょう

また、咽頭クラミジアは性器クラミジアと比較して、同じ薬を使っても治りにくいことがわかっています。
咽頭クラミジアは完治までに、性器クラミジアと比べて2倍の時間がかかると言われています。
しかし、咽頭クラミジアであっても治らない病気ではありません。
根気よく受診することが重要です。

なぜクラミジアが喉に感染するのか

クラミジアは性感染症ですが、なぜ性器以外の喉でも発見されてしまうのでしょうか。
それは、性の多様化が一つの原因だとされています。
また、家庭や学校で性教育をオープンに行わない日本の風土により、正しい知識を持たないまま性交渉を体験してしまう若者が多いことも理由の一つです。

では、喉でクラミジアが発見される原因を具体的に、より詳しく追求してみましょう。
1990年台、性交渉をしない口のみを使った性行為であるオーラルセックスのみを提供する性風俗業が急激に増加しました。
これに伴い、オーラルセックスのみで感染したクラミジア患者が増えました。
このようなかたは日常生活において性的パートナーと、風俗店で行っているのと同じようなオーラルセックスしていることが容易に推測されます。

また、性交渉をする前のオーラルセックスを含む愛撫の段階では感染しないという思い込みを持ったかたが多いことも、感染の拡大を助長していると言えます。
喉にクラミジア菌が存在した場合、相手がヘルペス感染症などを持っている期間にディープキスや粘膜同士が接触するような愛撫をした場合、感染するリスクがあります。
さらに唾液や精液、および膣分泌物のついた手を口腔内に含んでしまった場合にも感染しないとは言い切れません。
こういったケースでは必ずしもコンドームが有効ではなく、愛撫によって感染成立といった結果を招く恐れがあります。

オーラルセックスをする場合の対策法

オーラルセックスで感染が成立する場合には主に2通りがあります。
性器にいるクラミジアがオーラルセックスにより喉に感染を起こす場合と、喉にいるクラミジアが性器に感染を起こす場合です。
性感染症に関する調査では、クラミジアをもっている人の10~20%に、口腔内にもこれらの菌が認められると報告するものもあり、オーラルセックスを含む愛撫による感染の拡大が懸念されています。

では、オーラルセックスによる咽頭クラミジアを予防するためにはどういった対策をすれば良いのでしょうか。
まず、無防備なオーラルセックスは避けましょう。
またオーラルセックスをする時にはコンドームやラップを使用することで、感染のリスクが減らせます。
しかしこれらを使用しても完全に感染は予防できるものではありません。

オーラルセックスでコンドームを使用する時には、JISマークのついた品質の良いコンドームを選びましょう。
装着時にはコンドームの裏表を確認し、傷つけないように注意します。
装着は口に挿入する前から行い、口から完全に抜き終わるまでつけておきます。
万が一オーラルセックス中にコンドームが破けてしまった場合は、速やかにうがいをしましょう。
しかし、クラミジアが喉の奥深くまで達してしまった場合には、うがいだけでは不十分になることもあります。

また、口腔内は性器に比べると粘膜が切れて出血しやすくなっています。
傷口は正常な粘膜と比較して容易に感染を引き起こします。
そのため、口腔内の粘膜や歯茎が傷つかないように普段から注意しておきましょう。
また、オーラルセックスを含む愛撫の前には性器を清潔に洗っておくことも効果的です。

そして、不特定多数のパートナーがいるかたですと、クラミジアの自覚症状は乏しいことから知らないうちに感染し、他のパートナーにもどんどん広めていく危険性があります。
そのため、特定の同じ相手とのみ性交渉を持つことが、予防につながります。

さらに、オーラルセックスのあとにはうがいをしましょう。
インターネット上ではオーラルセックス後のうがいでイソジンを使うかどうか議論されています。
イソジンは殺菌力が強く、かえって咽喉の粘膜を傷めてしまうケースがあり、クラミジアに感染しやすい状態になるという意見もあります。
一方でイソジンを使ったほうが、使わなかった時よりも感染が食い止められるという見解を出しているかたもいます。

クラミジア感染者は若者に多い?

クラミジアの感染者は、日本だけでも100万人にのぼると言われています。
性感染症の中でも若年層に多く見られているという特徴があります。

クラミジアに関する調査結果

日本性教育協会が高校生を対象に行なったクラミジアの調査を見てみましょう。
この調査では高校生のうち、10%前後に感染者が見られたと報告されています。
また、同調査で初性交年齢と感染率の関係を見た場合、年齢が低いほどクラミジアに感染している率が高い傾向であったことも判明しています。

また、避妊具を製造する会社では、初性交をした相手と知り合ったきっかけを調査しているところもあります。
この調査結果によると、20代のかたの7~9%は、初性交した相手と知り合ったきっかけがSNSや出会い系サイトだったと報告しています。
現在では中高生でもSNSが手軽に使える環境が整っています。
そういった背景からSNSで出会った不特定の人と関係を持ったことのある割合は、今後増加していくと推測されます。

人工妊娠中絶件数から見るクラミジア

次に20歳未満の人工妊娠中絶件数を確認しましょう。
1989年、20歳未満のかただけで約3万件の人工妊娠中絶が実施されました。
この数字は徐々に減少し、2015年には約1万6000件になっています。

この件数のうち、コンドームを使用した性行為が行われていなかった割合は少なくないはずです。
コンドームは避妊具としてだけではなく、性感染症の予防にも役に立ちます。
そのため、この1万6000件の中には、クラミジアを中心とした性感染症予防策が正しく行われていなかったケースが大部分だと予測されます。

若者にクラミジアが蔓延した主因は、これらだけではありません。
生理痛や生理不順を改善する目的でピルを使用しているかたが増えたことも原因です。
ピルを内服すると、高い避妊の効果を得ることができるため、コンドームを使用せずに性交渉してしまうケースがあります。
こういったことから、ピルを服用していても、クラミジアの予防策が必要なことがわかります。

年齢を重ねた世代では感染者が少ないクラミジア

ここまで、クラミジアが若者に多い理由をお伝えしてきましたが、これからはなぜ年齢を重ねた世代で感染者が少なくなるのかについて説明します。

クラミジアの感染者数は20代をピークにし、30代で半減します。
この年代の特徴は、子宮がん検診や乳がん検診、ブライダルチェックなどで初めて婦人科を受診するかたが多いことです。
また、妊娠して産婦人科を受診してはじめてクラミジアが発覚し、パートナーと一緒に内服薬を開始する場合もあります。

性教育を見直すことがクラミジアの予防につながる

そもそも、若者のクラミジア感染を予防するためにはどういった対策ができるでしょうか。
以下にまとめます。

若者の性交渉の多様化には、性的な映画や出版物などを扱うメディアやインターネットからの情報の氾濫が大きく影響していると言われています。
しかしながら、中高生を含む若者はどれが正しい情報であるのか、自分で判断できない場合も多くあります。
日本では、家庭や学校で具体的な性教育がされにくい風土があり、同じ年代の友人と情報を共有する程度に留まっている現状があります。

とはいえ、クラミジアを含む性感染症から若者を守るためには、家庭や学校での性教育が重要です。
家庭では学校に任せれば良いと考えがちです。
しかし、大学生を対象に行われた性感染症に対する意識の変化と学習効果についての研究では「オーラルセックスでは性感染症がうつらない」という正誤を問う問題において、誤っていると回答できた割合は18.7%だったと報告されています。
要するに、通常の学校での授業では内容が不足していることがわかり、若者のクラミジア感染者を減らすためには、家庭での性教育も重要だといえます。

では、家庭ではどのように性教育をしていけば良いのかお話します。
理想的な性教育の開始時期は、物心がついた時期とされており、小さい頃から口や胸や性器などのプライベートゾーンについて教えていくことで、性に関する話をタブー視しない、あるいはさせない環境を整えておくと良いとされています。
しかし、こういった時期を逃してしまったとしても、遅すぎることはありません。
子どもから性に関する質問をされた時には、逃げずに嘘をつかないで信頼できる情報を伝えましょう。

このように性にまつわる話が親子でできるような配慮を積み重ねていけば、中高生であったとしても性器や咽頭に異変を感じた時に、両親や医師へ相談しやすくなります。

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